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研究者らは、AIのように考え、ラジオのように話すことができる世界初の「マイクロ波脳」チップを開発しました…
研究者が「マイクロ波脳」と呼ぶ低電力マイクロチップは、マイクロ波の物理特性を利用して超高速データ信号と無線通信信号の両方を計算する初のプロセッサです。
(画像提供:コーネル大学)

コーネル大学の静かな研究室で、研究者たちは数十年にわたるデジタル回路の慣習を徹底的に検証しました。その結果生まれたシリコンチップは、クロック駆動のプロセッサというより、むしろ生きた脳のように思考します。ただし、ニューロンの代わりに、制御されたマイクロ波エネルギーのバーストを使用します。

「マイクロ波脳」と呼ばれるこの実験的なプロセッサは、超高速データストリームの処理とワイヤレス通信という2つの処理を同時にこなすことができ、スマートウォッチに収まるほどの小型サイズを実現しています。しかも、消費電力はわずか200ミリワット。これは、同等のデジタルニューラルネットワークの消費電力のほんの一部に過ぎません。

仕組み

秘密は、段階的なデジタルアプローチを放棄することにあります。従来のチップは、クロックに同期してバイナリロジックゲートにデータを流します。コーネル大学の設計では、代わりに調整可能なマイクロ波導波管を通して情報を送り込み、数十ギガヘルツでパターンをリアルタイムに生成・認識し、待機時間やボトルネックを回避します。

各導波管は「物理的なニューロン」のように機能し、マイクロ波信号の振幅、位相、周波数をデータの特徴を表すように整形します。これらの特徴はアナログ領域で相互作用し、干渉することで、信号がデジタル化される前に豊富なパターンを生成します。この物理的な混合と伝播は、デジタルネットワークが通常複数のソフトウェア層を介して実現する特徴抽出と変換を本質的に実行します。

マイクロ波脳

脳の神経経路と神経線維束を研究する科学者。コンピューター研究における物理的な神経モデルに着想を得たものと類似している。(画像クレジット: Getty Images / Westend61)

このチップの設計では、マイクロ波の自然な挙動を利用して入力データストリームを処理する、一種のAIフレームワークをハードウェアに直接組み込んでいます。メモリに値を保存して膨大な計算を繰り返し実行する代わりに、マイクロ波ネットワーク自体に重い処理を任せています。電子チューナーや信号シフターといった調整可能な小型部品によって、チップ内の経路をリアルタイムで変更できるため、最初から再学習することなく、異なるAIタスクを切り替えることができます。

それが何を意味するのか

テストでは、このチップは無線信号を88%以上の精度で識別し、はるかに大型のデジタルモデルと同等の性能を示しました。重要なのは、この精度は、デジタルシステムに通常必要な追加回路やエラー訂正なしに、単純な作業から複雑な作業まで一貫して維持されたことです。

このハードウェアは信号挙動の変化に自然に敏感であるため、AI計算以外にも幅広い用途があります。無線トラフィックの異常を監視、レーダーターゲットの追跡、混雑した無線チャネルの解読などが可能です。さらに改良を加えれば、個人用デバイスに内蔵し、クラウドサーバーに依存せずにローカルAIモデルを実行できるようになると研究チームは考えています。

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「マイクロ波脳」はまだプロトタイプ段階です。しかし、DARPAと全米科学財団の支援を受け、コーネル大学の研究チームは既に、このマイクロ波脳の規模拡大と既存のマイクロ波・デジタルシステムへの統合に取り組んでいます。もし成功すれば、コンピューティングと通信ハードウェアの境界線はすぐに曖昧になるかもしれません。スマートフォンのプロセッサがアンテナを兼ね、スマートウォッチが自宅に電話をかけることなく思考する時代が到来するのです。

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ハッサム・ナシルは、長年の技術編集者兼ライターとしての経験を持つ、熱狂的なハードウェア愛好家です。CPUの詳細な比較やハードウェア全般のニュースを専門としています。仕事以外の時間は、常に進化を続けるカスタム水冷式ゲーミングマシンのためにチューブを曲げたり、趣味で最新のCPUやGPUのベンチマークテストを行ったりしています。